地方空港のストレスを解決する「スカイマーク 神戸空港×クリエイター」の実践型ワークショップを開催しました。限られたハコに、クリエイティブな発想を。

地方空港である神戸空港の発着便数7割を占める「スカイマーク株式会社」が抱えるのは、混雑による利用客の「ストレス」です。

神戸空港だけではなく多くの地方空港は、利用客の数や将来の需要に合わせたサイズになっていますが、そこで何が起こっているか?

例えば、新幹線の場合、線路が基本的に一方向1本となっていて、日本を一筆書きのように縦断していますので、神戸から乗車したとして、大阪に行きたい人も、東京に行きたい人も、とりあえず、方向さえ合った新幹線に乗ればいずれ目的地に到着します。

ところが飛行機の場合、それぞれが目的地に合わせた航路を描きます。どれに乗っても良い訳ではありませんし、さらに全席指定。神戸空港の場合でいうと、ポートライナー(電車)で離陸1時間前くらいを目安に、一斉に利用客が集まってきます。

それらしい電車が空港駅に到着すると、一気に混雑が押し寄せてくるわけです。その後、一気に人が引く。繁忙期と閑散期を1日に何度も繰り返す。1日平均で見ればそうでもないと思いますが、とにかく、利用客が集中してしまうのです。

飛行機運行の性質上、それはそれで仕方のないことかもしれません。

ハコ(ハード)を大きくするとかスタッフを増やすというのは簡単ですが、意識すべきは、繁忙期と同時に閑散期も確実にあるわけなので、現状のリソースで、『どのように利用客のストレスを解消するか』というのが「スカイマーク」が抱える課題となっています。

そこで、神戸市の外郭団体「神戸市産業振興財団」が運営する「神戸起業操練所」では、中小企業・起業・企業によるクリエイター活用を支援する側面から、『快適に過ごせる場のデザイン ~ストレスフリー空港の創造~』と題し、クリエイターによる企業の課題解決プログラムを開催しました。

ファシリテーター(講師、進行役)は、デザイナーの和田武大さん(株式会社デザインヒーロー 代表取締役)です。グラフィックデザインはもちろんのこと、市民参加型のクリエイティブイベントなどを開催した実績を持ち、プログラムの先導役となります。

今回のプログラムは、神戸空港の課題解決を行いますので、初回は神戸空港で開催。空港の課題解決に、デザイナーが先導するということ自体、正直驚きました。プログラムを終えた後の提案が、良い意味で楽しみです。

スカイマーク株式会社 空港本部 神戸空港支店 支店長 戸田健太郎さん。簡単に紹介すると、神戸空港におけるスカイマークの責任者です。外資系航空会社での勤務経験もあるそうです。

課題を提示した企業を代表して開会の挨拶。簡単な趣旨説明なども行われました。今回のプログラムでは、実際に予算を確保し、提案した内容を実行フェーズまで移していきたい旨の説明をする一方で、「クリエイティブの可能性に期待しているが、現実的な提案をしてほしい」とのこと。

つまり、大幅なハードの改修などはハードルが高いということ、また、神戸空港自体は関西エアポートの所有なので、スカイマークが利用しているエリアを中心とした提案が望ましいということになります。

ここからは、実際に神戸空港でオペレーションを行うスタッフから、神戸空港のみならず、飛行機・空港自体が抱える課題についての説明がなされました。

「地方空港はとにかく混む」という印象の人が多いかもしれません。

紐解いていくと、電車の在来線と乗車までの作業が似ている新幹線と違い、飛行機は非日常であり、離陸までの工程が多い(チケット購入、搭乗手続き、手荷物受託・検査、保安検査、搭乗)ことが混雑する原因となっているようです。

さらに、利用客の空港利用における熟練度は様々で、例えば、定期的に利用しているビジネス利用と、年に0~数回しか使わない観光利用とでは、利用客の手続きスピードが格段に違います。高速道路のように、追い越し車線もありませんので、両者が混在。そこに大きなストレスが発生するのです。

そこで、不慣れ、不安、混雑からくる利用客のストレスを解消し、「ストレスフリーの空港を目指す」ということが今回の課題。

この後、課題抽出のため、搭乗手続きまでの一連の作業を体験するツアーが開催されました。空港自体の撮影が禁止されていましたので、写真はありませんが、搭乗手続きカウンター、受託手荷物検査、保安検査場、搭乗口など混雑ポイントの確認が行われました。

場所を変えて、2日目。空港での課題説明や、当日の体験ツアーなどを元に、それぞれが感じたことの共有や、課題解決アプローチなどをチームに分かれて検討します。

ここで改めて、「ストレス」とは何でしょうか?

ストレスとは、精神的な緊張の事を指していますが、今回の場合、そのストレスがどこから来るものなのか、また、なぜ発生しているのかを捉える必要があります。

ストレスを「苦痛の根源 × 継続される時間」と解釈すれば、どちらかを解決すれば、利用客はストレスを感じなくなります。

もう少し簡単に言うと、2時間の好きな映画を見ている時は、ストレスはゼロ「見たい映画(苦痛の根源=0) × 2時間)ですし、予防接種のための嫌いな注射もほぼストレスはゼロ「嫌いな注射 × 20秒くらい?(継続する時間が極めて僅少)」ではないでしょうか。

つまり、空港利用における必要な手続きを無くすことができないので、「苦痛の根源」をどのように和らげるのか?また、かかる時間をどうように短くするのか?この、 2つのアプローチで解決していくことになります。

参加しているクリエイターは、グラフィックデザイナーやWEBデザイナーはもちろん、インテリアデザイナー、動画クリエイター、ダンサーなど様々。

既に、課題整理などをしてきた参加者もいるようです。普段のデザインとは違うアプローチなので、議論が盛り上がっています。単純にデザインとして考えた場合、ゴールがあってないような課題でもありますが、今回の課題については、デザインも含めた「ソリューション」の提案です。

バックグラウンドは様々ですが、それぞれの知見を発揮し、チームで解決することが求められます。

 

そして最終日。スカイマークの空港スタッフを迎え、チームに別れてクリエイターによる発表が行われました。プログラム自体は3日間の開催となりますが、合間に集まって資料などをまとめるチームもあったそうです。

チームの発表です。それぞれのバックグラウンドを活かした内容もありましたし、全く異なる内容もありました。ポイントとしては、素養や根本にあるアイデアを活かすということでしょう。当然ながら、現在の職業も大きなアドバンテージになることは言うまでもありません。

一番印象に残ったアイデアは、行列の横にある仕切りのポールを上まで伸ばし、「あと20分、あと10分」などの表示をするというものです。もちろん正確に時間を測定することはできませんので、おおよその時間をそのポールの位置から予測し、利用客に伝えることになります。

これは、ゴールを見せるということになり、「苦痛の根源」を和らげることにとても効果的です。何分かかるか分からない状態で30分待つのと、最初から30分と分かっていて30分待つのとでは、後者の方が、利用客のストレスは少ないでしょう。

同じ時間を過ごすにしても、「苦痛の根源」を和らげたり低下させたりすることは、結果的にストレスフリーに近づいていくわけです。

次に、「映像を流す」というアイデア。現在でも映像を使った「手続きの案内」などが行われていますが、それを「ストレスフリー」という観点から、よりコンテンツを充実させたり、行列と並行して複数のディスプレイを用いた継続的な映像情報の発信を行うというものです。

文字情報と映像情報では、圧倒的に映像情報の方が情報量が多いです。新聞などの文字情報が、意識を向けて情報をインプットさせる「(伝えたい情報から見て)プル情報発信」だとすれば、テレビなどの映像情報は、そこまで集中しなくても目と耳で感じ取る「(伝えたい情報から見て)プッシュ情報発信」です。

プログラム参加者に動画クリエイターがいたりもしましたので、提案したモックアップ動画自体の完成度が高かった気がしますし、Youtubeの流行によって、映像に対する一般的な評価も高くなっているように感じます。

あとは、「香り」というアイデアも印象的でした。リラクゼーション効果を高めるということはもちろんですが、利用客をうまく棲み分けたのではないでしょうか。つまり、ビジネス利用の利用客にとっては、いつもの「香り」かもしれませんが、「観光利用」の利用客にとっては、よりリラクゼーション効果が期待できると思われます。

クリエイターによるアイデアの提案後、空港スタッフからフィードバック。最後に、支店長 戸田健太郎さんによる総評とフィードバックです。

全体として、突飛で非現実的な提案があるのではないかと懸念していたそうですが、現実的で「ストレスフリーの軽減」を期待できる提案が多かったという評価でした。

現場のオペレーションを知り尽くしたスタッフによる日々の改善はもちろんのこと、大手企業については、例えば、「業務プロセス コンサルタント」に依頼して、課題を解決することもあるでしょう。しかし、今回の課題は心情的な「ストレスの軽減」です。

企業の課題解決にクリエイターを活用することは、まさに「第三の矢」だと言えるかもしれません。同じ動線・同じ業務プロセスであるが、心情的に心地よかったり、イライラが減ったり。直接、課題解決に繋がらなくても、間接的に、課題解決のヒントが生まれたかもしれません。

今回提案されたアイデアは、具体的なスケジュールに落とし込んだ上で、短期的にできる事はすぐ実行し、中長期的にできる事は、関係各所との調整や働きかけに入るそうです。

既に、みなさんがこれまでに見ていた「神戸空港」が変わっているかもしれません。

 

【受講者インタビュー:映像クリエイター谷井麻美さん】

グループワークが面白かったです。色々な分野のクリエイターとグループになって課題に取り組む作業があったのですが、各自の視点が違うのが、足し算ではなく“掛け算”になるチームワークの楽しさを味わいました。難しかったのが、どこまで自分を主張していいのかがよく分からず戸惑いました。時間が短くて大変でしたが、出来栄えには満足です!よく頑張ったと思います。自分がチームの中で出来ること、人それぞれの特性を考えたり、どういう役割をすると上手く回るのか?「チームワーク」を学びました。

谷井さんのHPはコチラ→ https://asamoda-life.com/