若手クリエイターを育てる5日間

第2回目となる「『Ace-KOBE』クリエイティブ起業論」が、2019年10月から12月にかけて開催されました。『Ace-KOBE』は原則35 歳以下でデザイン・クリエイティブ事業に従事する方を対象とした若手クリエイター育成プログラムです。今回の参加者はWEBデザイナーやコンサルタントとして既にフリーランスとして働いている人、企業に勤めながら独立をめざすクリエイター、中には八百屋事業を展開する人やアパレルメーカーの立ち上げに向けて準備を進める人など、状況も職種も多様な12名。そんな12名でどのような5日間を過ごしたかをレポートします。

本講座のテーマは、「ブランディング手法を活かしたセルフブランディング」です。“ブランディング”や“ブランド”という言葉は、多くの人が一度は耳にしたことがあると思います。特に私のようにデザイン・クリエイティブ事業に従事している人なら、聞くだけでなく、“日常的に使用する”ワードの1つかもしれません。

しかし、
「ブランディングって何?」
「どうすればできるの?」

それを聞かれて体系的に説明できる人がどれほどいるでしょうか。フリーランスや起業をめざす人が自身をアピールするためにも、クリエイターとして他社を支援するためにも必要な知識とスキルであるはずのブランディング。その“聞いたことはあるが正体がよくわからない存在”であるブランディングを紐解き、教えてくれたのが神戸でブランディング会社を運営するAKIND Inc.(アカインド)の岩野翼氏と森江朝広氏。LCC「Peach」のブランディングをはじめ、神戸の食と市民をつなげる「EAT LOCAL KOBE」など、数多くの企業やプロジェクトのブランディング支援を行ってきた“ブランディングのプロフェッショナル”であるお2人です。

ブランディングの正体を学ぶ

まず第1回の授業で行われたのは、3分間での自己紹介&事業紹介プレゼン。それぞれが事前に用意した資料をもとに、自分たちの事業や実績、スキルなどを発表しました。初対面の方たちに向けたプレゼンということもあり、妙な緊張感に包まれるセミナールーム。私も大勢の前で(といっても12名ですが…)で自身の事業について話したことがないので、順番が回ってくるまでずっとドキドキしていました。しかし、これはプレゼンの優劣を競うものではありません。ブランディングを自分の事業に置き換えて学ぶための“ベース”であり、この講座を通して自分達がどのように変化するかを知るために“現状を把握する”という講座の第一歩です。

続く第2回、第3回の授業は前半が知識をインプットするための講義、後半に知識をアウトプットするためのグループワークが行われました。まず初めの授業では、「ブランディングってそもそも何?」という、参加者の多くが持つ疑問を解消する講義から。岩野氏曰く、ブランディングという概念は、生まれてまだ30年程とのことです。諸説ありますが、マーケティングという考え方が誕生したのは1910年頃とのことなので、比較するとその歴史はまだ長いとは言えません。どちらかというと、まだ未成熟な分野。そのため、ブランディングにはさまざまな見解や定義が存在しているそうです。今回の講座では代表的な考え方を教わりながらブランディングへの理解を深めました。岩野氏は実戦経験が豊富なだけでなく、イギリスのBrunel Universityでブランディング&デザイン戦略修士課程を卒業しています。そのため、抽象的で理解しづらいブランディングの概念を体系的にわかりやすく解説してくれ、参加者からは「講義を聞くたびに新たな発見や気づきがいくつもある!」との声が多く聞かれました。

アウトプットで“ブランディング”を血肉にする

グループワークは参加者を3グループに分け、グループ内の1名の事業をブランディングしていきます。ちなみに今回各チームが取り組んだブランディングの事業は、Aグループが神戸の農家と消費者をつなぐ野菜の宅配事業、Bグループが地球環境に配慮したアパレル事業、そして私が所属するCグループがフリーランス向けSNS事業でした。
岩野氏が用意したブランディンにおけるフレームの項目は5つ。

  • DEFINITION(本事業の定義)
  • DIFFERENTATUION(差別化要因)
  • BEHABIOR SHIFT(変化の波乗り)
  • CORE VALUE(独自価値)
  • VISION(成功後のあるべき姿)

これらを1つずつ深堀して教わりながら、グループワークで各グループの事業ブランディングを進めていきます。学んだことをしっかりと自分のものにするためには、このグループワークが非常に重要です。例えば、理論を学ぶだけで自転車を乗れるようにはなりません。実際に自転車に乗って、体で覚える必要があります。ブランディングも知識を頭に入れるだけでは、実務に置き換えるは難しいもの。だからこそ、学んだことを使ってグループワークでアウトプットすることが大切だと感じました。

5つの項目に対する講義とグループワークを終え、第4回は発表に向けて資料を作成。そして、迎えた最終回は各グループが持ち時間10分でプレゼンテーションを行いました。各グループともに、第1回のプレゼンと比較するとどのような想いやビジョンを持っている事業なのか、競合他社と比べてどのような独自性や優位性があるのかなど、事業を成長させるための要素が格段に深化。最後に岩野氏、森江氏からも総評や今後のアドバイスをもらい、2019年の「『Ace-KOBE』クリエイティブ起業論」は幕を閉じました。

AceKOBEを受講して…

本講座を通して、これまで独学だったブランディングを体系的に学べたことは非常に有意義であったことは言うまでもありません。また、自身の事業に対しても現状の課題を整理し、これから5年後、10年後を見つめるという大変貴重な時間になったと感じています。
一方で、ブランディングは5回の講座で答えを導き出せるほど単純なものではないことも実感しました。この講座をきっかけに、さらに学びを深めて実務とセルフブランディングに活かしていきたいと思います。

リポーターのご紹介

古本さんの事業紹介
Banana Species代表
神戸・大阪を中心に、コピーライター、クリエイティブディレクター、プランナーとして事業を展開。企業や教育機関のパンフレット、ポスター、DMなどのプロモーションツールの制作から、プランナーとして商品やサービスをどのようにプロモーションをするかという設計を行っています。