Hints Vol.02

Hints 【企業の悩み × ソトの人】
新しい「価値」創造の実例やアイデアを紹介する情報誌

Hints vol.02 2020 Summer 表紙画像 Hints vol.02 2020 Summer 表紙画像

Vol.022020 Summer

vol.01 2020 Spring TAKE FREE

逆境に効くクリエイティブ。

チームブランディングで伝統の火を灯し続ける。 イメージ写真

SCENE01

二人を引き寄せた
「変わらなければ」という想い。

神戸マッチ株式会社で社長を務める嵯峨山さんが家業を継ぐ決意をしたのは、今から22年前の1998年。当時、社長だった父親から言われたのは、「マッチでは10年も食えないぞ」という言葉でした。しかし、当時は1億円以上の利益も出ており、それほど深刻には受け止めていなかったそうです。

ところが、その言葉は予想をはるかに上回るスピードで現実に。なんと、3年後には赤字に転落していたのです。理由は、減り続けるマッチの需要や世界的な禁煙ブームでした。そこからは、遊休地の売却や役員の保険を解約するなど、何とか経営を続ける状態。“変わらなければ”という想いで、印刷技術を応用して新しくバスのラッピング事業を立ち上げたり、これまでとは全く異なる分野となるLEDを販売したりと、試行錯誤の日々でした。

一方、神戸を拠点に活動をしていたデザイナーの堀内さんも、壁を感じていました。フリーランスのデザイナーとして、百貨店のチラシ制作などの案件をこなしながら、「自分の仕事はずっとこのままでいいのか」と考えていたと言います。誰がどんな想いで作ったかわからないモノをプロモーションすることに違和感があったのです。時を同じくして、堀内さんも“変わらなければ”と思っていました。そんな二人を結んだのは、レトロなデザインを印刷したマッチです。

二人をつないだレトロマッチ イメージ写真

昔使われていたマッチのデザインをケースに印刷し、復刻版として製品化するために、神戸マッチはある業者に印刷を依頼しました。その業者で神戸マッチを担当している方と堀内さんは知り合いだったのです。その方からレトロマッチの印刷サンプルを偶然受け取った堀内さんは、小さなキャンパスに描かれたデザインに感銘を受けました。すぐさまそのデザインを高解像度でスキャンし、Tシャツに印字。そのTシャツを持って、嵯峨山さんに会いにいきました。

二人をつないだレトロマッチ イメージ写真
『SHUSHU(シュシュ)』開発ステップイメージ写真

神戸マッチ株式会社

代表取締役嵯峨山 真史

1929年にマッチ製造会社として誕生。90年に渡って伝統産業を守り続けてきた。現在、2015年4月に発売したオンリーワン製品である着火機能付きお香 "hibi 10MINUTES AROMA"とともに、100年企業を目指しイノベーション進行中。

http://kobe-match.co.jp

SCENE02

伝統×クリエイティブから
生まれた逆転の一手。

マッチ単体で売るのではなく、レトロマッチのデザインを流用した“マッチの雑貨ブランド”をつくることで、若者のマッチへの関心を高める提案をした堀内さん。提案を受けた嵯峨山さんは、その場で実施することを決断し、すぐに商品化、販売へ踏み切りました。商品は狙い通りコレクション品として若者にリーチ。「同じマッチでもデザインを変え、ターゲットを変えれば通常よりも高値で売れるということを体感しました」と嵯峨山さんは言います。しかし、ここで1つ問題が。コレクションの場合は、一度購入するとリピートはしないということでした。つまり、大きな売上とはならなかったのです。「マッチをマッチのまま売っているだけではダメだ…」。そう痛感した嵯峨山さんは、新たに日常品として使用してもらえるような商品を開発することを決意。マッチの着火技術を用いた製品の可能性を模索しました。

その中で生まれたアイデアが、着火具を必要としないマッチ型のお香だったのです。先端にマッチの着火部がついたお香は、まだ世の中にない、まったく新しい製品。そのため、開発は一筋縄にはいきませんでした。
神戸マッチでは着火技術はあるものの、お香を作る技術はないため、まずはパートナー探しから。その時、取引先から紹介を受けたのが株式会社大発の社長を務める下村さんでした。
大発の売り上げは約9割が線香です。線香はご年配の方にとって日常品。そのため、直ちに売り上げが落ちるという事態が起こることはないものの、仏壇やお墓を持たない世代が増えてきたため、ゆっくりと売り上げが下がる将来を懸念していました。

『SHUSHU(シュシュ)』開発ステップイメージ写真

株式会社大発

代表取締役社長下村 暢作

線香作りの長い歴史を持つ淡路島で、昭和11年に創業したお線香、お香を生産する会社。創業時からフランスの香水メーカーが調合した香りで線香をつくるなど、革新的なものづくりを続けてきた老舗企業である。

http://daihatsu-jp.com

SCENE03

妥協なき開発を続けた
3年半
に込めた想い。

そんな時に訪ねてきたのが嵯峨山さんでした。「『線香でマッチ棒を作ってほしい』と、ずいぶん気軽に言われましたよ。」と、笑みを浮かべて当時を振り返る下村さん。それもそのはず、線香は軽い力で折れるほど強度がないもので、着火するほどの耐久性を持たせることは非常に難しいからです。そこで下村さんは線香を長く大きくして、割りばしほどのサイズにすることで着火に耐えられる強度に仕上げた試作品をつくりました。
早速、嵯峨山さんが堀内さんに見せたところ、返ってきた言葉はまさかの「ダサい…」の一言。「こけしみたいでした!」と笑いながら話す堀内さんは、その場で作り直すことをお願いしました。そこには、単なる見た目だけでなく、堀内さんのある想いがあったからです。

それは、形を変えてもマッチを擦るという行為は伝統として残したかったから。「例えば、誕生日ケーキに火を灯すとき、チャッカマンやライターより、マッチでつける方が良さを感じます。手間はかかりますが、その手間の中にこそおもしろさや温かみがあると思うんです。」と語る堀内さん。それと同時に、“マッチ会社ならではの製品”にしたいという考えもありました。そこからさまざまな技術やアイデアで挑戦を繰り返す毎日。「hibiのことがずっと頭から離れませんでした」と言う下村さんの言葉から、いかにその開発が困難であったかを計り知ることができます。2014年に現在のマッチタイプのhibiが誕生するまでに、なんと3年半の時間を費やしたそうです。

『SHUSHU(シュシュ)』開発ステップイメージ写真

トランクデザイン株式会社

代表取締役/クリエイティブディレクター堀内 康広

地場産業のプロデュースやブランディングなどを行うクリエイティブカンパニー。兵庫県のモノづくりを紹介する「Hyogocraft」を立ち上げ、アパレル・お香・木工・陶磁器など地域産業を活かした自社ブランドも手がける。
近年は兵庫県のみならず、日本全国の伝統工芸のプロデュースやシティプロモーションに携わっている。

https://trunkdesign-web.com

SCENE04

それぞれの強みを生かし
信頼し合うこと
が成功の秘訣。

製品が完成した後は、さまざまな展示会へ参加。助成金や補助金を活用したことで積極的に国内外の展示会へ出展することができたそうです。唯一無二の製品であるhibiは、あっという間に話題となり、全国の雑貨店などへ。その勢いは国内に留まらず、現在ではフランスをはじめ、30か国約800店舗で販売されているという快進撃を見せています。

順風満帆に販路を拡大するhibi。こうして世の中に広がったのは、「決して商品力やデザイン性だけではありません」と堀内さんは言います。商品を卸したあとのきめ細やかなフォローなど、神戸マッチさんの丁寧な営業があったからです。hibiの成功は三者がそれぞれの得分野である技術力、デザイン力、営業力を集結したからこそ生まれたものだったのです。嵯峨山さんは、こうしてお互いの強みを生かして製品開発することを“チームブランディング”と呼んでいます。このチームブランディングで最も重要なことはお互いフェアであること。発注元、下請けという立場では言いたいことが言えず良いものが生まれないと言います。信頼し合い、任せるところは思い切って任せる。こうした信頼関係が、本当に良いものを作るためには欠かせないのです。
この3社は新たな製品開発に向け、また動き始めているとのこと。どのような商品が誕生するのか今から楽しみです。

『SHUSHU(シュシュ)』開発ステップイメージ写真
『SHUSHU(シュシュ)』開発ステップイメージ写真

神戸起業操練所 オープンイノベーションプログラム

『SHUSHU(シュシュ)』開発ステップイメージ写真

企業が自社だけでなく新しいプロダクト・サービスの開発のため、他社や大学、地方自治体、社会起業家など、パートナーを公募するイベントです。
異業種、異分野が持つ技術やアイデア、サービス、ノウハウ、データ、知識などを組み合わせ、革新的なビジネスモデル、研究成果、製品開発、サービス開発、組織改革、行政改革、地域活性化、ソーシャルイノベーション等につなげていきます。費用は無料。マッチングや説明会などのイベント告知、申込受付、当日運営、提案とりまとめ等の事務局業務は神戸起業操練所が行います。スタートアップや中小企業、クリエイターと広く交流することができ、コストと手間をあまりかけずにオープンイノベーションの取り組みを進められます。

オープンイノベーションプログラム イメージ写真

他社クリエイターと新たな価値・事業を創出する 六甲バター“おいしく元気”なビジネスアイデアコンテストを開催 参加企業、六甲バター株式会社にインタビュー他社クリエイターと新たな価値・事業を創出する 六甲バター“おいしく元気”なビジネスアイデアコンテストを開催 参加企業、六甲バター株式会社にインタビュー

神戸起業操練所オープンイノベーションプログラムに企業として参加される事になった経緯や背景を教えてください。
現在、弊社では中長期的に会社の新領域を考えるという仕事に取り組んでいます。会社内で企画を考えることもできるのですが、発想が偏ったり、なかなか新しいアイデアが出にくいと感じていました。そこで、一度外部の方とワークショップなどをして、一緒に考え、新しい発想に触れたいなと考えていたんです。ところが、今回、コロナウィルスの影響でワークショップ自体が実施できないということで悩んでいたところ、神戸起業操練所さんにアドバイスをもらい、今回のアイデアコンテストを実施する運びとなりました。
御社が優先的に取り組みたい企業課題や、今回のビジネスアイデアコンテストの開催に期待したことはどのようなことですか?
弊社の事業内容としては、チーズ事業に偏っています。だから、チーズ事業以外に事業領域を広げるということも考えられますね。しかし、今回はチーズ事業自体をどう広げていくかにフォーカスしています。というのも、国内は少子高齢化となり、そのなかでこのチーズ事業をどうするかが大きな課題です。1つは海外への輸出ですが、それはすでに実行しています。それ以外に国内はどうするのか? そのあたりを今回のビジネスアイデアコンテストのお題として投げさせていただきました。
今回のビジネスアイデアコンテスト開催後のご感想を頂けますか?
開催前は特に社内では出ないような生活者目線での提案を期待していましたが、実際に開催して予想以上のアイデア数と提案内容の深さに驚きました。また、社内だけで考えていると、このようには出ないなと思います。実際にご自分で事業をされていたり、企業に所属する方からも提案していただいたので、より具体的な内容で良かったと感じています。今後、事業を検討していく上でのヒントを得られたと思っております。

Projection-KOBE

Projection-KOBE

クリエイティブディレクションを肌で感じる

2020年1月から3月にかけて、クリエイティブディレクションのスキルを学ぶ「Projection-KOBE」が開催されました。クリエイティブディレクションとは、企業課題や戦略を把握し、市場環境を理解し、解決策を企画・設計するスキルです。
「Projection-KOBE」は、人から学ぶことが難しいと思われるクリエイティブディレクションのスキルを、実際の企業の課題を通して実践的に学ぶことができる講座です。

参加者はフリーランスとして働くデザイナーやライター、クリエイティブな分野で事業展開されているスタートアップや企業に勤めながらクリエイティブディレクションのスキルを学びたい方など、職種や状況も様々な方が集まりました。
今回の講義を通して特に耳に残った言葉が「未来をみせる」と「伴走する」という言葉です。

冨士武徳氏(株式会社ノンバーバル) 写真

講師はブランディングディレクター、冨士武徳氏(株式会社ノンバーバル)。現役で活躍される講師から、実際の事例を通して理論や考え方を学ぶことができる。

発表の様子 写真

インプット⇒アウトプット⇒フィードバックを繰り返すことでより効果的に学ぶことができました。

「未来をみせる」とは、その言葉通り、クライアントに対しそのビジネスを展開していった先の未来をイメージさせることです。こんなに広まっていて、こんなに喜んでもらっていて、こんな展開を行っている、というようなワクワクするような未来です。その未来をより具体的に、説得力をもってみせるために必要なのがクリエイティブディレクションのスキルです。
今回の講義を通じ、クリエイティブディレクションというのは、そのスキルを駆使しいかにクライアントに「ワクワクする」未来をみせれるか、ということが大切だと感じました。

またクリエイティブディレクションというのは、一度きりでできるものではなく、クライアントに寄り添い「伴走」しながら方向性を示し進んでいかなければならない。「ワクワクする」未来を実現していくためには「長期的なスパンでクライアントと協力的に、伴走するように進めていかなければならない」という言葉もとても印象に残りました。今すぐにできることと、さらに学びを深めていかなければならないことと双方ありますが、今回の講座で得たことを今後のビジネスに活かしていきたいと思います。

発表の様子 写真

インプット⇒アウトプット⇒フィードバックを繰り返すことでより効果的に学ぶことができました。

2020年度Projection-KOBEは2020年10月~12月にオンラインで開催決定!

詳しくはこちら
今回レポートを書いていただいた
操練所メンバーは

ウェブクリエイター廣狩 拓也 さん

廣狩 拓也 写真

10年以上のWEB業界勤務を経て独立。WEB全般(デザインからコーディングまで)を主体とし、グラフィックデザイン、撮影なども行う。現在、芦屋市・神戸市の個人事業主・小規模事業者に向けて初期費用不要で月額5,000円のローコスト定額ウェブ制作サービスを提供している。1984年生まれ、二児の父。趣味は飲むこととフットサル。

https://hirogar.com
Recent Work最近手がけたお仕事
KIANO ウェブサイト 写真
KIANO
https://kiano-kobe.com

神戸発のサステナブルサンダルブランドであるKIANO(キアーノ)のウェブサイトを制作。天然ゴムを使用し、体にも環境にも優しいサンダルを製造、販売しています。
出会いは「Projection-KOBE2019」でした!

神戸起業操練所新規事業個別相談会&
クリエイターマッチングの
お知らせ

アイデアはあるけど起業や新規事業の立ち上げは不安、補助金、助成金を活用したい、クリエイティブなアプローチを取り入れ、更なる事業展開する事に興味がある、外部リソースとの協業に関する疑問など、様々な分野に精通したコーディネーターに相談することができます。
クリエイターや異業種など協業マッチング支援の他、ビジネスアイデアの創出やプランニングなどのアドバイスなど、それぞれの事業や会社にあった、ご提案やお手伝いをさせていただきます。(相談無料・予約制)個別相談会のお申し込みはこちらから

Hints

「抱えている課題についてクリエイターの力を借りたい!」「そもそもクリエイターとは?」という方に向けて、神戸起業操練所ではクリエイターとのビジネスマッチングやセミナーを定期的に開催しています。昨年は『FOUNDKOBE』と題し、クリエイティブへの第一歩を後押しする無料セミナーを5 回開催。様々なプロジェクトを成功させているクリエイターをゲストに迎え、「空間づくり」や「テクノロジー×クリエイティブ」など多様な切り口からクリエイティブの可能性を伝えています。セミナー後には交流会も開催しています。

HintsのPDF版はこちら

神戸企業・クリエイターの方へ

我が社のコラボ事例もぜひ取材して欲しい!(自薦他薦歓迎)、コラボできるクリエイターを紹介して欲しい、などご希望・ご意見ありましたら、神戸起業操練所までご連絡ください。

Hintsの配架場所

神戸市
神戸起業操練所
神戸市産業振興センター
神戸市立図書館
デザインクリエイティブセンター神戸(KIITO)
マリンピア神戸マリンピアラボ
コワーキングスペースONPAPER
大阪市・京都市
コワーキングスペースOgyaa’s (UMEDA&OIKE)
つくば市
つくばスタートアップパーク
川崎市
Kawasaki-NEDO Innovation Center(K–NIC)